食後の血糖値が基準範囲外である場合の解釈
常識的な普通量の食事を摂取された後の血糖値について
食事後の血糖値が時間に関係なく(随時血糖値)200㎎/d1以上有れば、それだけで糖尿病と診断される根拠になります。 それほどでなくても、随時血糖値が基準範囲を10%程度以上越えている時は、糖尿病の疑いがありますので、 一定量のブドウ糖を飲んで血糖の上昇度を調べる「血糖負荷試験」を受けることをお奨めします。 10%程度というのは、食事の量や質による個人差がある為です。

常識的な量の食事をとったのに、食後1時間半以降の血糖値が低い場合は糖尿病の初期か、その体質である可能性があります。

糖尿病の初期には、食後30~60分頃の血糖値が上昇する傾向になります。 そうすると膵臓はインスリン(血糖を抑えるホルモン)を多めに分泌して血糖の上昇を抑えようとします(高インスリン血症)。 このインスリン作用により食後の血糖上昇は下降に転じますが食後1時間半以降には、むしろ血糖値を下げ過ぎる方向に働くことが多くなります。

食後早期の血糖が上昇し、短時間で下降していく現象を「急峻高血糖」と言います。 この急峻高血糖と高インスリン血症は、個人差がありますが、2~5年ぐらい続いた後で明らかな糖尿病(顕性糖尿病)へと移行する可能性があります。 この傾向は肥満者に、より多く見られます。

肥満者においては高インスリン血症が先か、高血糖が先か?という議論があります。 いまだ明確な結論はありませんが、両者がお互いに悪影響を及ぼして膵臓の疲労をもたらし、インスリンの分泌低下やインスリンの効果不十分な状態(インスリン抵抗性)をもたらして糖尿病に進展するものと思われます。
対策
体重が少しづつでも減る程度に食事量を制限してがんばって下さい。 それには糖尿病学会編纂の「食品交換表」が役立ちます。適度の運動に努力して下さい。 運動により体重を減らし皮下脂肪を減らしてやると、インスリンの効きめを良くなります(インスリンの感受性改善)。

血糖化指数(GI index)」の低い糖質性食品を、食事の中になるべく多く取り入れて血糖値の急激な上昇を防ぎましょう。

人間ドックの簡易糖負荷試験の結果を盲信してはいけない。
                      -それはなぜか?-
日本糖尿病学会の糖尿病判定基準(1999年)
糖尿病型:随時血糖値(㎎/dl)が200mg/dl以上の場合のほか、75gブドウ糖負荷で空腹時126mg/dl以上か、負荷後2時間で200mg/dl以上のどちらかがある場合。
正常型:75gブドウ糖負荷試験で、空腹時110mg/dl以下、負荷後2時間で140mg/dl以下の両方を満たすもの。
境界型:正常型と糖尿病型のいずれも満たさないものとする。

以上は1998年のWHO暫定基準と同じですが、WHOは世界各国の糖尿病発生率などの比較上、インスリン分泌状況や急峻高血糖を判定対象外にしています。 実施困難な判定条件を規定すると、そのデータが取れない国が多い為です。 従って、食後30~60分の血糖が180~90mg/dl近くに上昇し高インスリン血症があっても、空腹時と食後2時間値が判定基準値以下なら正常と判断されてしまう危険があります。
また、簡易糖負荷試験では通常、空腹時、1時間、2時間の血糖しか測定しておらず、インスリン濃度も測定していません。 病態を把握するためには、空腹時より30分ごとに180分まで血糖を測定し、またポイントのインスリンを測定する精密GTTがより正確です。

【参考】
通常食摂取後の血糖の判定
通常の会社検診では、例えば昼食後の随時血糖値を見ていることも多く、食後約1時間までの血糖値の上昇はブドウ糖負荷試験の場合より少なめとなり、目立った上昇が捕まりにくいかもしれません。 しかし、食後1時間半以降の血糖値が低いときは、高インスリン血症の可能性を考えて経過を注意してみる必要があります。
血糖検査前の食事量が少なすぎた場合
この時には当然、食後の血糖値の上昇度が低いので、前項で申し上げたことは当てはまりません。 もし貴方の体重が標準体重の10%以下でしたら・平常の食事量をバランス良く増やして体重の増加に心掛けて下さい。 体重が少なすぎると大怪我をしたり重病にかかった時などに抵抗カが無く、命を落とすことがあり得ます。
普通量の食事を摂取したのに食後の血糖値が低い場合
食後30~60分、あるいは、その後も全般に血糖値の上昇が低い場合は胃下垂、胃アトニー、胃の出口(幽門)や十二指腸の狭窄などで、食ぺた物が胃から腸へ送り出されるのおそい可能性があります。
2型糖尿病病態の進展
下図は、血糖と内因性インスリン分泌能の関係から、2型糖尿病の進展をみたものです。

欧米人では、A→B→C→D→Eと病態が進展するが、日本人ではA→C→D→Eと進行するタイプが多いようです。
しかしながら、精密GTTを施行すると最近は、日本人でも肥満者には、Bのタイプが時々見られることがあります。
また、内外の文献ではインスリン抵抗性が高インスリン血症に先行するという意見が大勢を占めるといわれています。病態を把握して、それに適合した治療法を選択することが重要と考えられます。
内因性インスリン分泌能の検査
糖尿病と診断した場合、治療法の選択に際し内因性のインスリン分泌能を知ることは重要です。
内因性インスリンの分泌がある程度保たれていれば、食事、運動療法更に経口剤を加えて改善する可能性があります。
インスリン分泌が低下していれば、最初からインスリンを導入することが望ましいといえます。
①ブドウ糖75g負荷精密GTT
食後180分までの血糖と同時に、空腹時、30分後、120分後を(最小限として)インスリンも測定する(負荷後のインスリン分泌傾向が判る)。 負荷後のインスリンが10μU//ml以下は内因性インスリンが枯渇。
②24時間尿中C-peptide
1日10μg以下は1型、20μg以下はインスリン分泌能低下と考えられます。
③グルカゴン負荷試験
早朝空腹時、グルカゴン1mgを静注し,負荷前および5分後の血中C-peptideを測定。
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